パリ3区の遺産相続人ー自己肯定できるのが真の大人

最終更新: 2月1日


昨年から始めたzoomでのミーティングイベント「暮らすように旅するパリ」、2021年の第1回目は「3区」でした。3区の魅力はその歴史とお散歩にちょうど良い街並み。パリの中でも古い貴族の館が多く残る区で、美しい正方形の形をしたボージュ広場が有名です。



17世紀の貴族の館、Hôtels Particuliers。名の知れた大きな建物は、長い年月をかけて補修され、それぞれ美術館や図書館となり、一般にも公開されています。中には消防士の宿舎になった建物も。彼らが寝起きする部屋の天井や、運動をする部屋の屋根に数百年も昔の装飾が残されています。手を伸ばすと生きた歴史に触れられる、そんな風に思わせてくれる空気がここマレにはあります。



zoomで街の歴史をさらりと解説した後は、お約束の映画鑑賞。その名も「パリ3区の遺産相続人」、街の魅力をおさらいするにはぴったりの作品でした。勿論これはあくまでも邦題、原題は「my old lady」と言います。ヴィアジェという欧米に残るユニークな不動産売買の方式により、亡くなった父からパリ3区にある大きなアパルトマンを受け継いだ主人公。でもその遺産には90歳の老婦人が付いていた!そう聞いただけで、既にグッと興味をそそられますよね。(ヴィアジェの詳細については是非映画を観てください。)



これからご覧になる方のためにストーリーについて多くは語れませんが、映画に出てくる風景には、マレ独特な雰囲気のある小路や公園が随所に取り込まれ、観光地とは違う街の顔を知ることができます。何より大きな門に閉ざされて、我々には中を知り得ないマレのお屋敷の構造やインテリアを存分に見ることができる、それだけでも大いに見る価値があるのでは?



ちなみに映画の舞台となったこのアパルトマンは、2階建でかなり広く、幾つもの使っていない部屋があります。素敵なのはサロンディベール(温室のような陽当たりの良いリビング)、そしてバルコニーのある娘クロエの私室、窓から見渡せる緑豊かな広いお庭。映画の中で、不動産屋に行った主人公がその耳で聞いた資産価値はなんと1200万ユーロ!でも悲しいかなヴィアジェの物件は、そこに住む売主が亡くなるまでは、完全に買主の自由にはならないのです。



主人公は3回の離婚歴を持つ独身子供なしの57歳男性。この主人公をケヴィン・クラインが演じます。世間ではそれなりの経験と知力、財力を兼ね備えた熟年を期待するところが、彼は未だに子供時代のトラウマをひきづったままパリでも右往左往。父の遺した遺産の本当の価値に気づくのは映画終盤のずっと後。英国TVドラマ「ダウントン・アビー」で大叔母の役を演じひときわ存在感を放ったマギー・スミスが、自分の娘のみならず昔の恋人の息子である主人公のトラウマの原因であったことを知った上でも自分の生き方を一切否定せず、かと言って周りの人を突き離すこともせず、全てひっくるめて過去を愛しむ魅力的な老女を演じ圧巻。人生の最後はかくありたいと思わせる円熟した大人を見せてくれます。

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