Stories around Els

 

大人のインテリアに不可欠な上質な家具、個性的な装飾品の話、買付のこぼれ話や海外で見つけた素敵なブティック、

お洒落なホテルの紹介、気になる美術展など、ライフスタイル、インテリアに関わる様々なトピックについて書いてます。

西洋更紗 -toile de jouy-



東京のカルチャーサロン、プティ・セナクルで、年に数回セミナーの講師をつとめています。テーマはその時によって異なりますが、フランスのファブリック、トワル・ド・ジュイについてこれまでに何回かお話しさせていただきました。私はジュイファブリックを専門にしている訳でもなく、またエルスデザインでトワル・ド・ジュイのカーテンをオーダーメードしたことは未だありませんが、茶箱の製作や手芸の世界で大変人気があるため、カルチャーサロンではしばしばその歴史的背景について説明を求められます。



上の画像は代表的なトワル・ド・ジュイのプリントモチーフ。真ん中に描かれている女性はマリー・アントワネットです。それほどファブリックにご関心のない方でもフランスを旅行されたことのある方なら、上の画像をみれば「ああこれか」と、頭の片隅に記憶として残っているのではないでしょうか。この白地に赤(あるいは青など)単色で描かれた田園風景のファブリック、壁紙は、今でもホテルの客室やクラシックなティーサロン、ブティックでよく使われており、フレンチインテリアを程よく体現しています。




ファブリックにプリントされた風景は、先のような王族や貴族の日常風景の他、時に異国のアジアの国のものであったり、時に田舎に住む人たちの賑やかなお祭りであったり、時に大海を旅する交易商人の冒険が描かれたりしています。人々の動きは非常に詳細に描かれていて、歴史上実際あった出来事を(新聞のように)伝えるために製作されることもあったようです。大きなリピートで描かれるこの大判モチーフのプリント綿は、装飾美術市の中では、大きな成功を収めたジュイ村の工場の名が冠されて、その後テキスタイル史の中で確固たる一分野となりました。




仏語でトワル・ド・ジュイと呼ばれるこの独特なプリント綿は、18世紀よりずっと以前インドで生産されていたインド更紗にその端を発します。元々寒冷地のヨーロッパでは、綿花は栽培されておらず、木綿は未知の素材でした。加えてインド更紗の上に描かれているエキゾチックな花や熱帯植物のモチーフは、当時のヨーロッパ人の目にはとても斬新で魅力的でに映りました。人はそれを熱狂的に求め値は釣り上がり、高額な商品として国内の織物産業を脅かすようになったため、時の絶対君主である王(ルイ14世)は輸入禁止令を出さなくてはならないほどでした。




インド更紗と西洋更紗、トワル・ド・ジュイ。2015年10ー2016年1月の間、ロンドンのVictoria&Albert musuem で開催された『The Fabric India』では、その豊富な所蔵品を公開しインド更紗の歴史について詳しく紹介しました。やはり2016年、日本でも『フランス更紗ートワル・ド・ジュイ展』が開催されています。私は後者の展覧会しか行ってはいませんが、V&A美術館の展覧会に関しては、豊富な刊行物、メディア記事、ビデオ、同美術館のサイトでその内容を伺い知ることができました。




上の画像はV&Aの所蔵品でインド更紗で作られた当時のドレスです。このように、インド更紗がヨーロッパに入ってきた当初は、小花模様のモチーフがドレスなどのファッションアイテムに盛んに用いられたました。しかしトワル・ド・ジュイの名をこれほどまでに有名にしたのは紛れもなく大判の風景モチーフで、壁や家具、クッションに用いられることで新しい市場を作ったと言えます。



ヨーロッパのファブリックブランド大手メーカーは、アーカイブに残るクラシックなパターンだけでなく、新作の現代的なモチーフをトワル・ド・ジュイという名称で発表し続けています。フレンチスタイルのインテリアを実現する上で、風景画のリピートに特徴あるトワル・ド・ジュイが現代でもその人気を失っていないことがこのことからも判ります。

上の画像はマヌエル・カノーヴァの現行コレクション、TRIANONの中のACADEMIA。フランス知識人の書斎棚を再現、彩り鮮やかなモチーフにしています。フランスの伝統を取り入れながらも、明るい色調(3ヴァリエーション)とウィットに富んだ柄で、いかにも欧米の富裕層に好まれるファブリックです。

​〒530-0005 大阪市北区中之島3-1-8 

リバーサイドビルディング1F tel. 06-6225-7262

© 2020 by els design