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Art exhibition: ボストン美術館から来た120点「LA PARISIENNE」

最終更新: 2018年4月7日



  東京出張のお楽しみは、大阪では公開されない展覧会に仕事の合間に覗くこと。そして今回の目標は、世田谷美術館で開催中の、ボストン美術館所蔵品による「パリジェンヌ展」でした。昨年に修復したばかりのマネの「街の歌い手」など、印象的な等身大の肖像画が数点ありました。


  広々とした展示場は5つに区分けされ、まず第1章、時代は18世紀。「パリという舞台」と題されたこのシーン、邸宅と劇場にみる18世紀のエレガンスを紹介しています。華麗な貴婦人の衣装、ローブ・ア・ラ・フランセーズの実物の他、当時トレンドとなった舞台衣装デッサンも複数点展示されています。続く第2章、「日々の生活」では、前章の対比として、その時代の女性を取り巻く社会的な風潮、男性視点で求められた女性の役割についてです。ドーミエの風刺画やフラゴナールの絵画が女性にとっては決して生きやすいとは言えない社会を如実に私達に語りかけます。


  圧巻なのは、やはり中盤の第3章と第4章、「パリジェンヌの確立」と「芸術を取り巻く環境」でした。パリに生きる女性だけでなく、パリモードに影響を受けるボストンの女性たちの肖像も並行して展示されているのが実に興味深いです。美術展パンフレットをマネ描くミューズと一緒に飾ったのは、ジョン・シンガー・サージェントによるチャールズ・E・インチズ夫人、ルイーズ・ボメロイ。「パリジェンヌになりきるボストン社交界の美女」と題されていますが、「パリジェンヌ」という言葉が流行の最先端を行く羨望の的として当時から用いられていたことはもはや疑う余地がありません。高く結い上げた髪に真紅のドレス。大きくVに切り込まれた胸元と左腕だけに配されたリボン。アメリカの中にあってはいち早くパリの流行が流れ込んだボストンであっても、さぞや人目を惹く斬新なデザインであったのでしょう。


  第4章で紹介されるマネの大作「街の歌い手」は、約70年ぶりの修復を経て初公開されたのだそうです。口元に運ばれるサクランボの赤と青みがかったシックなグレーの衣装がなんとも意味深。薔薇色に輝く頬のルイーズに比べると、不健康とも言えるほど青白い顔のマネのミューズ、ヴィクトリーヌ・ムーラン。彼女こそ『草上の昼食』や『オランピア』のモデルも務め、のちに自身も画家として活躍し、当時のパリの画家から引っ張りだこであった人気モデル。挑むような眼差しと身体全体を覆うマントの上からでもうかがえる毅然とした立ち姿が圧巻です。(展示会では等身大のその大きさにも驚きます。富裕層でもなく神話の神々でもない一市民を等身大で描くことなど前時代にはありえないことでした。)パリに住む芸術家たちの美意識と、ボストンに住む富裕層のそれとは、同じ街からインスピレーションを得ながらも、少なからず距離があったことがこの2つの肖像画から見て取れます。


  フィナーレ、第5章の「モダン・シーン」。この章は、個人的には作品数も内容も尻窄まり感があり、パリの壮大な3世紀をまとめるにはやや説得力、迫力に欠ける終わり方でした。この展示会の本テーマ、「時代を駆け抜ける女性たちの息吹」、そしてその表舞台の根底にある「男性上位の一方的な価値観」を真に理解するためには、さらなる追加資料や詳しい歴史的・社会的な背景を説明する書籍などが不可欠です。すでにそうした知識のある方には「点がつながる感覚」、まだ準備ができていなかった方は、「なんとなく立ち上る雰囲気」、そのいずれかで満足できたなら、入場料分の価値はあるでは...? 評価は人によって違うにせよ、私には中身の濃さよりは美しい後味だけが印象に残る展示会でした。


展覧会ホームページは、下記のリンクで。(公開は2018年1/13-4/1)

https://www.setagayaartmuseum.or.jp/exhibition/special/detail.php?id=sp00187





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